1.特定行政書士とは
従来は、行政不服審査法に基づく行政不服審査手続きを業として行えるのは、弁護士に限られていました。
しかしながら、行政書士法が改正されて(平成26年6月27日公布)、弁護士だけでなく、行政書士にも行政不服審査法の代理権が付与されることになりました。この行政不服審査法の代理権を有する行政書士を【特定行政書士】といいます。
2.特定行政書士制度のための行政書士法改正
これまで行政書士は自分が依頼を受けた許認可申請の結果について、依頼者の代理人として争うことは原則としてできませんでした。しかし、今回の改正により、一定の行政書士(特定行政書士)が本人に代わって許認可申請の結果について、代理人として争うことができるようになりました。
例えば、行政書士が産業廃棄物処理の許可の依頼を受けたとしましょう。行政書士は適法に許認可申請をしたのですが、許認可庁は不許可の判断をしました。この行政書士が一定の要件を満たした特定行政書士である場合、依頼者に代わって不服審査請求という手続きで、不許可について争うことができます。不服審査手続きは裁判所ではなく行政庁で行われます。行政書士による主張、立証が認められれば、許可を得られる可能性が出てくるのです。
今回の改正は、行政書士に新たな権限を与えるものであり、行政書士業務が拡大したといえます。
3.特定行政書士の課題
この改正により、行政書士は、行政庁を舞台として、裁判類似の手続きを行います。
しかし、行政書士試験科目には、裁判手続きに関する基本法とも言える民事訴訟法がありません。また、不服審査手続きに必要なその他の知識も行政書士試験では十分に出題されていません。
そこで、行政不服審査法の代理権付与を適切に行使するために、研修や試験が実施され、それを修了したものが「特定行政書士」として、代理権が与えられます。つまり、行政書士ならば誰でも行政不服審査法の代理権が与えられるわけではないのです。
「特定行政書士」に関する研修内容や試験については、他の制度とのバランスから、研修の上で、試験が課されます。
こちらの試験に合格しないと、「特定行政書士」としての活動はできません。
4.特定行政書士に依頼する
特定行政書士は、行政手続の専門家として、長年の経験から、行政との戦い方、落としどころを熟知しています。
ですから、許認可の申請をしたのに不許可になった等、行政処分に不服がある場合には、迷わず相談したほうがいいかと思います。